ダウン症のある子どもの離乳食から食事へ -食べる機能を育てるためにー

監修/玉井 浩 編集/日本ダウン症療育研究会 摂食指導ワーキンググループ
定価:2,300 円(+税) 診断と治療社

ダウン症のあるお子さんの離乳食の進め方から始まり、一生かかわる「食べる」ということに関して、実践までわかりやすく書かれた本です。後半のパート8にある、摂食に関する 41 のQ&A では具体的な悩みへのあたたかい回答が掲載されています。乳幼児期のみならず、学童期まで網羅して、 ダウン症に特化した「食べる機能を育てるために」必要な内容がこまやかにわかります。本書の目的、思いについて本書 より「刊行にあたって」を転載します。

刊行にあたって (本書巻頭より転載)

 本書は日本ダウン症療育研究会に設置されています言語聴覚士(ST)分科会有志メンバーに よって作成されたもので、咀嚼の基本的な発達過程を知り、それに合わせた食事の形態を考えていくものです。低緊張のため、哺乳力が弱いだけではなく、口唇を閉鎖する力も弱く、舌も突出しやすく、また咀嚼の発達自体もゆっくりで丸呑みしてしまいやすいため、ダウン症のあるお子さんを 育てている家族にとって、離乳食や食事の進め方に悩まれている方は多いようです。離乳食の形態などはゆっくり進めるように指導はされますが、赤ちゃんによっては食べ終わるまで時間のかかるお子さん、逆に食欲旺盛なお子さんもいて、工夫 が必要です。実際にどのように進めたらよいのか、具体的なことを、イラストを使ったり、わかりやすく説明している解説書、特にダウン症のあるお子さんの特性に配慮して説明されているものをぜひ届けたいという熱意で本書は書かれました。

 一般の離乳に関する本は、乳児から幼児の初期くらいまでを対象にしていますが、将来の成人になってからの食べ方の基本はこの乳幼児の時期に決まることが多く、とても大切です。

 さらに、Q&Aでは成人になってからの食に関する悩みについても解説していますので、「ダウン症のある方のための食に関する総合支援ガイド」といってもよいのではないかと思います。健 常のお子さんに比べ、ゆっくり育つことはわかっていても、どうしても他のダウン症のあるお子さんと比べてしまいます。将来の咀嚼機能の発達を支えているのは、いかにこの乳幼児期の離乳食・食事の食べ方を丁寧に観察・指導していくかですから、根気良くやっていきましょう。

 多くのダウン症のあるお子さんにとって本書がその助けとなること、そして、ご家族が安心して 食事を楽しむことができるようになっていただければ、それは望外の喜びです。

2023年6月
日本ダウン症療育研究会 会長
大阪医科薬科大学小児科 名誉教授
玉井 浩

ダウン症のある子どもの離乳食から食事へ -食べる機能を育てるためにー
ダウン症のある子どもの離乳食から食事へ -食べる機能を育てるためにー