選べなかった命~出生前診断の誤診で生まれた子

河合香織 著
文藝春秋/1,700円+税

母親が医師を提訴。この衝撃的な裁判がニュースに流れた時、わたしは言いようのない戸惑いとおびえを感じた。急速な医学の発展と、それに追いつけない社会、人の心。その歪みが今に与える影響は余りにも大きい。著者は5年以上をかけ、当事者の母親だけでなく、ダウン症のある方をも訪ね、丁寧な取材を重ねている。あとがきにこう記している。「安易な中絶も、安易な出産もない。…人間は時に間違う存在だ。選んだ道を良かれと思ったり、後悔したり、そうやって七転八倒して私たちはそれでも生きている」この本を手に取る事を躊躇した人にこそ読んで貰いたい一冊。
【京都府 武田 みどり(JDS会員)】